『終わらない黄昏』掌編/道草次郎
 
なるものとケビンなるもの電子通話での会話をここ数千年ほど研究している。ちなみに我々は細分化された下位に属する我々を有しており、そのうちの一思念体がこの私である。私の職務は、すなわち私の存在様態そのものは、モニカとケビンなるこの二人の個体の会話分析の為、暫定的な汎銀河制アポイントメントを与えられたに過ぎない。

私が、私の究明すべき普遍写像変換パテントのその端緒にすらつけていないことをここに申告しなければならないのは、甚だ遺憾である。この記録は百万分の一ナノ秒のタイムラグを以て即第53次元宇宙へと送信されるだろう。

この惑星の若い種族の姿はもうどこにも見当たらない。先程見かけた内燃機関は、その若い種族が遺した完全オートマチック性AIのドローンとそのドローンの下位ドローンだった。

若い種族はどこかの遠い銀河に散らばったのか、それとも次元層の割れ目に忍び込みかつて夢見たもう一つのアルカディアを再建したのか、はたまた有毒と化した黄昏の海岸にすまなそうに棲息する、鋏がつごう6本もある蟹に似た生命のような末路を辿ったのか、それは定かではない。



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