詩の日めくり 二〇一四年八月一日─三十一日/田中宏輔
かれたりしないこと。朝になったら、ドアの下をかならずのぞくこと。差し込まれたカードには、新しい意味が書かれている。
二〇一四年八月二十五日 「天使の球根」
月の夜だった。欠けるところのない、うつくしい月が、雲ひとつない空に、きらきらと輝いていた。また来てしまった。また、ぼくは、ここに来てしまった。もう、よそう、もう、よしてしまおう、と、何度も思ったのだけれど、夜になると、来たくなる。夜になると、また来てしまう。さびしかったのだ。たまらなく、さびしかったのだ。
橋の袂にある、小さな公園。葵公園と呼ばれる、ここには、夜になると、男を求める男たちがやって来る。ぼくが来たときには、まだ、
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