遺失の痣/ホロウ・シカエルボク
 

蜥蜴が乾涸びて鮮やかな炭になってた、それは現実に路上で起きたことだった、だが俺は、どうしてもそれが真実だと信じられなかった、時に真実はあまりにも単調で、ウンザリするほど単調に過ぎる、踏みつぶせばそれは、形を失くすだろう、踏みつぶせばそれは、灰になるのだろう、小蝿が人に集り続けるのはきっと劣等感からさ、数珠を左手に巻いた老婆とすれ違う外れの国道、笙の音色に似た声の鳥が鳴いている、空は治りきらない蕁麻疹みたいにじくじくとして、信号待ちで左の鎖骨のあたりを掻いてしまう、斜めに刻まれただろう幾筋かの爪傷が語りたがるのは上昇か、それとも落下だろうか?風が吹き抜けるたびに誰かの囁きが聞こえる気がする、俺は
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