どこまでも透明なルビー/アラガイs
 

ドアは開いたままにしておいた
大型の遺体処理装置が台車に引かれ入りやすくするために
小さな窓からレース越しに薄く幅を調整したLEDの光が差し込んでいた
朝だ!ピクセル形式に時間は感覚に標す。肌触りのいい合成素地のシーツ
今日も大気は赤茶色に染まるだろう
息もなく仄かにアーモンドの香りを携えてアランは眼を閉じていた
摂氏30度を下る体温の、青白い肌に浮かぶ赤黒い火列の脈筋
生き急ぎ窪んだ骨、その間接の狭い軋み、それは春の乾ききった氷河のように硬かった
 あと数時間後に彼の生命は尽きる  ありがとう
わたしは流れおちていく涙で指先を湿らし、もうピクリとも動かない唇に押し付けた

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