旅の人は/こたきひろし
旅の人は足を止める
道は遥か地平迄伸びていく
旅の人は休息を必要とする
身も心もつかれ果てて埃にまみれていた
旅の人は道端の叢に倒れ込む
仰向けにねて見上げた空を鳥の群れが飛んでいく
旅の人は目頭を熱くする
故郷を離れてながい歳月がたっていた
旅の人は一刻もはやく飢えと渇きをいやしたい
もう何日も飲まず喰わずだった
旅の人はすくいを欲しがる
人は誰一人通らない道だった
旅の人はもはや立ち上がれない
日は無情に暮れていく
旅の人は泪にくれる
生まれ故郷に帰りたい
その時スマホに着信が入る
仕事はまだ終わっていない
姉からだった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)