過去の歌、散らばる道/ホロウ・シカエルボク
ででも使うのだろうか
もしかしたらわたしの思い違いかもしれないけれど
静かにカメラを動かしている体格のいい年老いた男は
まるで自分がもうすぐ死ぬと思っているみたいな感じがした
わたしは橋を渡ることにした
歩いて渡るのは初めてだったけれど
そこでおしまいにするのは躊躇われたのだ
ごうごうと下品なまでの自意識で車が行きかう端っこを
舞台袖を移動する演者のように歩いた
橋もやはり少し凍っていたけれど
歩くのに苦労するほどではなかった
水平線には眩しい光が少しだけ見えた
けれど
今日あれがここに届くことは多分ないだろう
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