人混みのざわめき/こたきひろし
 

彼は東京に住んでいない

地方の市に住んでいた
家族を持って一戸建てを買って住んでいた

娘が二人
二人共中学途中から不登校になった
未だに彼はその原因と理由を娘らに問いただしていない
どうしても怖くて聞けなかった

長女は引き篭もりから自力で這い出したが
次女はそれが出来ずにいる

彼は彼の父親がしたように
追い出しが出来ない

これは真実の愛情なのか
そうでないのか
の自問と内心の葛藤を繰り返すままに

ひたすら
ひたすら
現実から眼を反らしている


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