灰音/オオカミ
燃えてしまった あのひとは
たとえばわたしが
宇宙の入り江に沈んでも
折り鶴のつばさにうちつけられても
あなたのその 手垢に塗れたナイフ
つきたてても
折れはしない
なみだでどろどろに溶けた骨
限る いのちをしっても
うばえないでしょう
それほどに
あいした
なにもない
ことばではたどれない
からだもすてられない
かわりに
なにもない
、と
言ってみせる
ちかちかと光る
あれは だれのなみだ
だれかのなみだ
なにもない
、けれど
こころでだきしめる
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