故郷/相田 九龍
久々に故郷に帰った
育った町は少しだけ表情を変えていて
寂れるどころか
新しい店も増えていた
実家の母は
やっぱり少しイカれていて
うまく説明できないけれど
やっぱり不快だった
待ち合わせ時間と場所を指定しておいて
なかなか駅に来ない
兄貴の新しい事業について耳を貸さない
部屋はやっぱり散らかっている
僕にはどうにもならないものが
ここには多過ぎる
少年でなくなるときの僕は
このどうしようもない気持ちを
詩に託していたんだろう
世界のニュースを見ながら
可哀想なのはやっぱり自分だと訴えたかった
この町から離れてよかったと思える場所が
生きるごとに増えるのは
不幸なことだろうか
たしかに幸せではないかもしれない
大切にしたいものは
一番はずっと自分だった
自分を大切にするために
選んだひとつひとつを不幸だとなじるな
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