イマジネーション/道草次郎
今日19号線を松本市へ向かい走っていたら、途中三匹のタヌキの死骸と出くわした。そのうち一匹は道路の真ん中でひどい死に方をしていた。自分の身の丈の三倍はあろうかという腸を、はげしく飛び出させていたのだ。対向車が来ていないことを確認し、ぼくは反対車線に出て追い越しをはかったがその際にタイヤが腸の一部を踏んでしまった。ミラー越しに視た後続車は、うまいこと死骸を車体の真下に位置させてそこを通過することに成功したようだった。松本で用事を済ませて帰路についた時にはすでにその死骸の姿はなく、赤黒い染みだけがアスファルトに残されていた。ぼくは家に着くと、何とはなしにタイヤを確認した。どこにもそれらしい形跡は見当たらなかった。そして、草臥れたと言ってさっきまで居眠りをしてしまった。それだけの話だ。そして、それだけの中に、全部があることを知っている。
戻る 編 削 Point(3)