どうしてこんなに暗いのかしら/ただのみきや
 
彫刻

折り畳んだまま手紙は透けて
時間だけが冴える冬の箱の中
なにも温めない火に包まれて鳴いた
繭をそっと咥え
欄干に耳を傾ける
肌に沈む月
纏わる艶を朧にし
蠢く幾千幾万の
翻訳し得ない沈黙は
埋もれもせず
足跡も残さずに
白紙の雪に影だけが
猫のように絶えず避けて





ダンス

水面は揺れるが水底は揺れない
虚像は見えるが実像は見えない
心はやわらかいが言葉はかたい
   全てのものが静止しても
   わたしは歪みぶれ続ける





死者の祈り

まだ雪が淡いうち
黄色い落葉のように祈ります

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