白の惑星/道草次郎
剤はちゃんと服用した。薬の効果はてき面で、だんだん男は自分が正常になっていくのを感じた。精神が不安定で仕方なかった。男はいても立ってもいられず、ふたたびクリニックに行くとドクターは言った。
「精神が不安定なのは良いことですよ」
「イエス、ドクター」
帰り道、雨上がりの空にモノクロの虹が架かっていた。男は思った。ああ久しぶりのちゃんとした虹だ。ずっと虹色の虹しか見えなかったのにやっぱりドクターは正しい。そのうちきっと空色の空や小麦色の小麦、上手くいけば黒色の黒なんかも拝めるかもしれないぞ。
躁うつ病がデフォルトの惑星の午後はこのようにしてまた、その白さを失って行くのだった。
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