電気痙攣療法/板谷みきょう
自殺念慮
自殺企図のある患者には
効果があるんだ
薬物治療より
電気痙攣療法を好んでた
老医師は
第二次世界大戦中に
ロシアに軍医として渡り
襲ってきた露助の右眼窩を
軍刀で突き刺したことを
誇らしげに口にしていた
七十を過ぎた辺りから
前立腺の具合が悪いと
自分で導尿し
留置バックを下げて
回診をしていた
その頃ボクは
ウケないM・Cと歌で
芽が出る機会も無く
ススキノでくすぶっていた
売れない喰えない
それで
月の半分を病院で働く
暮らしをしていた
1mの電源コードを切って
タイマーを接続し配線の先に
円形の銅板を繋いだ
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