詩の日めくり 二〇一四年六月一日─三十一日/田中宏輔
「えっ?」「たくさん出た。」「えっ? ああ。うん。」たしかに量が多かった。「また連絡ください。」「えっ?」思いっきりはげしいオーラルセックスをしたあとで、びっくりするようなことを聞かされて、ダブルで、頭がくらくらして、でも、二人の顔がようやく一つになって、「またメールしてもいいの?」かろうじて、こう訊くことが、ぼくができる精いっぱいのことだった。「嫁がメール見よるんで、すぐに消しますけど。」「えっ?」呆然としながら、しばらくのあいだ、彼の顔を見つめていた。一つの顔が二人の顔に見えて、二つの顔が一人の顔に見えてっていう、顔の輪郭と表情の往還というか、消失と出現の繰り返しに、ぼくは顔を上げて、目を瞬か
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