葱トリック/月夜乃海花
る味噌汁に入れられたネギの跡はなかったのだ。本当に葉だけで居たのだ。
だとしたら、ネギが自然に落ちたとしか考えられない。それは人間の手であろうがネギを咥えた鴨が落としたのかわからないが、自然に葉だけが落ちたのだ。
そして気づいたのである。ネギの断面を考えてみると簡単な話であった。ネギは多重構造になっている。わかりやすく言うと玉ねぎのようなものである。めくってもめくっても玉ねぎは玉ねぎであるように、ネギはネギなのだ。
つまり、私があの日見たのは。ネギの1番外の皮。そう考えるのが最も自然であろう。ネギの外側が恐らく何らかの方法により、引っ張られてその緑色の葉だけが残ったのであろう。た
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