葱トリック/月夜乃海花
東京某所。N駅近く。
確かあれは去年の今頃に起きた出来事だった。
私は何事も無いような文章に書く価値も、そもそも思い出す気力が勿体無いような日常のルーティンを繰り返していた。いつものように同じ時刻に来る電車に乗り、同じ道を通る。いつも見るコンクリートはまさに東京といえるような物も、特に無くただのコンクリートであった。
そんなコンクリートの地面をぼーっと、歩いていると緑色の何かがあった。緑色の何かが私の住むアパートの目の前に落ちている。そっと、近づいて見てみる。
ネギだった。
ネギ。ああ、ネギ。
そう、ネギだ。
ネギの緑色の葉が落ちていたのである。
そして
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