ノート(石へ)/木立 悟
 



石への疑問が
中庭に打ち寄せ
静かなたたずまいを満たしている


いつか見たことのある
窓を流れる水の色
いつだったのか思い出せない


曇の午後に立ちどまり
言葉を受け取るとき
何もかも過ぎ去るのを知る


光が緑の線となり
いくつもの柱にたどりつき
石の履歴を描いている


未来の姿のまま残るものへ
ゆっくりと緑なすものへ
光は語りつづけている


手のひらにこぼれる音が
さまざまな石と揺れるとき
音はふたたび問いへと還る


問いは石のまわりをめぐり
中庭の上の空へとつながり
小さな道を照らしている







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