黒猫と少年(1)/嘉野千尋
 
 *夜半過ぎに


  夜半過ぎになって、その悲しい報せはもたらされた。
  そっと肩を寄せてきた黒猫が、
 「それは悲しいことだわ」
  と、うわごとのように何度か繰り返した。
  少年は頭を振って、手紙を小さく折り始める。
  七度折られたところで、手紙は少年の手の中から消えた。
 「明日になれば、また郵便屋が来てしまうよ」
  悲しい目の黒猫に、少年はそうささやく。
  黒猫は、少年のために口にすべき言葉を知っていたけれど、
  静かに目を閉じてまた寝床へと戻った。
  少年の指先には、すでに明日の光が届いていた。

  



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