ことばは秋に枯れていく/かんな
むなしい
と声に出ることはなく
ことばは秋に静かに枯れていき
地面に落ちては
たくさんの足音に踏みつけられ
悲鳴にもなれず
冷たい風にたやすく飛ばされる
ここで
ここで腐りたくはない
雪の白さが覆い隠すのはいつも
埋もれては生きていけないものたちの
痛みだ
明日は溶けるのか
溶けることのないこころを
春はことばだ
風はあたたかさだ
咲いているのは悔しさだ
敷き詰められた花びらが形作るのは
守れなかった約束だ
西の空と夕暮れの海に
いつもわたしは許される
過去の気配にうつ伏せて
せいいっぱいに泣くのだから
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