眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
なたの作品と似て、自分の感情に振り回されず、でもどこか儚さが満ちている美しい回想記だ。あなたが「ぎらぎらした気持」ではなく、「世に出ようと思って書いた文章ではない」というそのままが、あなたの最初の本『ミラノ 霧の風景』のことだと私は思う(この作品の初出は、オリヴェッティ社の広報誌「SPAZIO」であって文芸誌ではないし、この広報誌は年に二度しか出ない、おそらく読者も限られたものであった。『ミラノ 霧の風景』の読者の反響の大きさに、あなたは、初出の時にはだれもそんなに騒がなかったから、驚いていた)。『ミラノ 霧の風景』が二つの文学賞を受けたあとの作品群も、やっぱり「ぎらぎら」はしていないが、なにより
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