眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
た そらのしたで
両手をひろげて
わたしは待つ。

ふってくる
ふってくる
あたり一めん
きいろい切口を見せた
枝の大群が
たかく にほひを
まきちらしながら
大地 めがけて
ふってくる。

むね一ぱいに
ばさばさと音たてる枝に
顔をうづめて
わたしは この
かほりたかい
あいに
じっと
くちづけする

須賀は後年、イタリア詩の訳をするときに句点を多用することがあって、それが面白いと思っていたら、実際に自分でも使っているのを見て、あっとおもった。実際には訳詩では、読点もよく用いていたが、この「詩集」においては、読点は数箇所しか使われていない。少なくと
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)