冬の兆しと安寧と/道草次郎
うす氷
白鳥の軟着がぴりりと亀裂をなすと
冬の尺が
沢の身の丈となり
沢そのものの理性が一新する
松の常緑は
健全なストア派だ
たとえば平安
あぶれた
熊のような炭売りが
烏帽子(えぼうし)をひろって
それを?(すさ)びに被ったこともあったろう
冬の陽の入る
間口などにて
晩秋の日本で
モロヘイヤを識(し)る
原産はオリエント
発音は
エジプト方言に拠るという
今では
ベビーフードにも裾野を拡げ
『オーランドー』が
流星具有譚だったなら
それは
スピカとヘール・ボップ彗星だろうか
スピカは星だ
でも響きが好きだから
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