よくある話/ヤギ
 
の風の強さの果てしなさ
底なしの空の怖ろしさ 切なさ
世界を美しいと思った
自分の周りのもの全て
コンクリートさえも輝いて見えた
あらゆる生き物が そして自分が輝いていて見えた
皆を愛していると思った
何かを悟ったと思った
明日になればこの感覚を思い出せないだろうな とも思った

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「−−−−−−−」

驟雨の中で告げられて
ちょうど足元に生えていたタンポポのように
ヒザをついた
その人は後ろから
顔を近づけ
口を開き
首筋を

噛んだ

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結局どこへ行くこともなく
教訓も答えもない
始まって終わった
よくある話


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