言葉と詩についてのメモ/道草次郎
 
もない気がする。メフィストフェレスはいつだって鼻先に脚を組み、妖しい微笑を湛えている。

最後に一つ。不思議なのはあれだけの混沌を抱え持つあの海というものが、なぜ、言葉を持たないのかという事実だ。けれども、もちろんそうやって不思議がるのは人間の癖に違いない。そうでない在り方を採用しているものには、そういうもののやり方というものがちゃんとある筈で、だから、あまり不思議がるのは却って可笑しいだろうか。海が、何か別の、人間には想像も及ばないような方法で混沌に始末の付けているとしたら…そういう事を想像するのは自分にとって、時として、とても愉快な事の一つなのだ。



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