こぎつねとまんまるお月さま(童話)/月夜乃海花
というのよ。」
「『おつきさま』?」
「おつきさまはまっくらな夜を照らしてくれるのよ。」
「じゃあ、たべられないの?」
こぎつねはしょんぼりとしました。
「ぼく、母さまのために『おせんべい』をとってみたかったの。」
母さまはこぎつねを抱きしめます。
「いいのよ。その気持ちだけでいいの。ありがとう。こんど、いっしょにおせんべいをたべにいきましょうね。」
「うん!」
とある寒い日。雪の中に小さい小さい穴があったら、そこはきつねが住んでいるかもしれません。
その穴から「おせんべい、おせんべい」と聞こえたらきっとこの親子でしょう。のちに、この親子はおせんべいを探しに旅に出るのですが、それはまた別のお話です。
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