終の犬 1。/たま
彼は。男の子だった。
十一月も残り少ないある日。ペットショップの。ゲージの中で。
怠惰な昼寝をしていた。彼は。失業中の。Kと。眼が合った。彼
は。生後四ヶ月の。赤札の付いた売れ残りだった。が。どことな
く厭世的な。幼い眼は。なにひとつ媚びることなく。Kを。無視
した。たまたま。Kは。白い犬を求めていた。Kの。視線が。彼
を。捉えたのは。彼が。白い犬だったからだ。
あくる日。Kの。家に同居した。彼は。虫ピンみたいな。とんが
った乳歯で。なんでもかんでも噛みつくのだった。が。とりあえ
ず。それが。彼の。仕事だった。Kも。とりあえず。彼に。名を
付けた。それが飼い主である。Kの。仕事
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