産んでくれとは/こたきひろし
何だか絶望的な息苦しさを感じた
のは私だけじゃないだろう
一刻も早く
この陰鬱な空気の中から逃げ出したい
逃げなくては
と言う焦りに似た感情に逆らえなくなってしまった
幸い
老母は死んだように眠っていた
一目会えればそれでいい
無理に目を覚まさせる必要を感じなかった
連れてきた幼い二人の娘は車の中に待たせていた
おばあちゃんの醜態はやはり見せるには忍びなかった
長くはいられない
言い訳にして夫婦は部屋を出た
施設の外に出て私はため息をついた
いったい何をしに来たのか分からないと言う
苦い思いにかられながらふと見上げた空は
良く晴れ渡ってた
晩秋の清々しい空だった
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