ほんの、少しだけ濡れた/ホロウ・シカエルボク
ぽんぽんと叩いて、白み始めた夜の中をまた歩き出した、けたたましい声の鳥が鳴いている、ふかふかのパンを色鮮やかにペイントしたトラックが、少し離れた繁華街を目指してアクセルを踏む、そのすべてが細かい埃に塗れている、そのまま降るのかと思われた雨はこと切れるみたいに止んでいた、動いているすべてのものが誰かの葬式を待っているみたいだった、ぼんやりしていた頭が少しだけギアを強く入れていた、新しい詩を書かなくちゃいけないと思った、俺は深呼吸をして、家までの道を走って帰った、キッチンのテーブルで短い詩を書いた、誰かに見せるものになるかどうかは分からないけれど、ようやくその日眠る理由が出来た気がした、手短にシャワーを浴びて、歯を磨いてベッドにもぐりこんだ、有名なギタリストが死んだそんな朝だった。
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