離島/地下鉄を歩く/カワグチタケシ
 
 加速中の一歩は、減速中の一歩よりはるかに重い。忘れることはたやすいが、思い出すことは更に容易だ。
 地下鉄を歩く。 

 離島をイメージする。
 ほぼ真円、全周三キロメートル、最高標高百メートルの離島を、猛禽の視線で、上空四百メートル付近を旋回しながら俯瞰する。
 晴天。海は凪いでいる。

 海と島との境目に、港と小さな集落があり、全島を一周する道路が走っている。原生林と下草の濃い緑が道路すれすれまで張り出して、海の群青と強いコントラストをなし、そのあいだを灰色の道路がトリミングしている。

 山頂に近い泉を目指して、旋回しながら降下する。湧水は数百年間変わらず、島の人々の暮ら
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