鏡の仮面劇/ただのみきや
光のものか
大気は肉体か
気温は衝動か
虚無だろうと混沌だろうと
どんなものでも鏡にし
魂は自問自答を繰り返す
だから万物は
人のかたちに似ている
ように見える
まるでなっていませんね
あなたの目には風しか映らないのですか
吸音
綾取りをする少女の
青みを帯びた影のように
耳もとに佇む人がいる
光の群れは隙間なく
狂ったように羽ばたいて
すべての音を食べ尽す
その時
聾唖の娘が産み落とした鈴ひとつ
木洩れ日を巻きながら
擬態語を寄せ付けず
ただ小さな白い蕾を
黄金の蜘蛛が抱くような――
見慣れない横顔の
迷い道――二時間 あるいは
二秒にすら満たないもの
《2020年10月31日》
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