卵焼きの思い出/道草次郎
毎日ではなかったが
うまい卵焼きをつくって弁当にいれてくれた
君のできる最大限のことをしてくれていて
ぼくもそれは同じだった
お互いずるさはあったけど
ぶつかるとどうしても引けなかった
ぼくはそれまで
自分が日本で一番なんでも譲れる甘ちゃんだと思ってたのに
今じゃ日本で一番なんにも譲れない甘ちゃんだったと思っている
いや日本で一番じゃなくて
住んでる小さな町で一番ぐらいだよ
訂正する
ぼくは自分の性分に縋り
君は君の過去に縋って
そのどちらも同じようなものなのに
いざ話し合うと
それは別々のものだという話を二人でこしらえた
これはたんに愚かなのか
人
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