袖すり合うも/六九郎
 
を考えてくれていたはずのあなた…
ソフト麺のスパゲティと赤すぎるウインナーと固まらないシャービックと…
母はハンカチで口元を覆ったまま、草履の足で私の横顔を何度も何度も蹴る。
母は、振り返ることなく部屋を出て行く。

最後に私の家族達。
みんなで私の遺体を取り囲む。
懐かしい顔が私を見下ろしている。
思い出以外、なにもお前達に残すことはできなかった…
大きな足小さな足が、私の遺体を蹴りつける。
無言のまま何度も何度も蹴りつける。

そうして私は一人残される。
これから焼かれて灰になる。
引き取り手のない灰は、アスファルトの原料になる。
できれば、どこかの高速道路の原料に。

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