袖すり合うも/六九郎
私の遺体は祭壇の前に安置される。
祭壇と言ってもごく簡素なもので、棺はなく、床にごろんと寝かされる。
坊主の読経はなく、静寂の中に参列者のしわぶきが混じる。
パイプ椅子の上には、懐かしい顔が並んでいる。
喪服姿の女が進み出る。
ああ、あなたは下田先生…
小学一年生の、優しく平和で退屈な日々…
音の出ないメロディオンと割れた筆洗いバケツ…
年取らぬ先生は腰をかがめ、白い布を剥ぎ取る。
晒された私の死に顔を見下ろし、先生は唇を歪める。
いきなり私の肩を蹴り、先生は靴音を響かせて部屋を出て行く。
喪服姿の男が進み出る。
たしかきみは西田君…
毎日一緒に自転車で中学校に通
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