一宿一飯の恩義/板谷みきょう
 


結局
ギターケースには
ボクが入れていた五円玉だけで
一時間ほどで放歌を終えた

着替え片付けている時に
声を掛けてくれた男性は
近くで木彫りの民芸品を
販売していると言う

流石歌う人は声が大きいねぇ
お時間があるなら
店に寄って行きませんか
近くだから

案内された民芸品店は小さく
木彫りの作品が溢れていて
圧倒されていたボクに
奥から引っ張り出してきた
40?程の木彫りのフクロウを差出し
木彫作家は
熊や二ポポが売れなくなって
初めて彫ったフクロウだけど
売り物にはならないから
良かったら貰ってって

そう言って包装紙にくるんで
手渡してくれた

そんな寄り道をして
陶芸作家のお宅を訪ねた

そこでも
火山灰の釉薬を使いながら
失敗した器などの作品を
陶芸作家の名を伏せることを条件に
段ボール箱に三つ貰った

そして
翌日、道南に向かって
焼き物を知人のショップ土産にして
車を走らせた

・・・・・・・・・

木彫りのふくろうは
今も
埃を被りながら茶の間に
置かれている
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