恋人と爆弾/ただのみきや
 
否応もなく
わたしの目はあなたを愛した

時は球形 すでに完成されて
人は無限の誤謬へと自らを贄にする
秋という真鍮を鳴らすわたしは透明に溺れ
傍から見れば猿だろう





いま蒼ざめた顔が

いま蒼ざめた顔が一つ
長い睫毛のような翼を広げて
ひとりの男の夢へ降り立った
涙は香料を含む
水底から見上げる波紋
聞えない歌の口形が男をあやしていた
眠りと目覚めの間の逢瀬
朝には黒い灰の花びら
光の中に霧散して
忘れられてしまう一つの顔





幸せ

あたたかい鍋物
――魚介か鶏がいい
美味い酒
――ぬるめの燗で

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