文殻/鳴神夭花
 
檸檬に似た香りがするりと
開け放した窓の向こうから
風と一緒に僕にまきついて
まるで撫でているようだね
君はきっとそんなことはしない
ねえ、これが恋であったら良かったのかな

僕が何もかも棄てて狂えるような
そんな大義名分を翳して
君に壊れた理想を押しつけて
たったそれだけのものになれたら

ただの狂人で済んだかな
この首を括れたかな

僕は
ねえ、
君から見たら人間ですか

「嫌いだよ」

その一言が欲しいけれど
君は絶対にそれをくれないことを
僕は誰よりも識っている
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