気分はもう/六九郎
 
ルトから幾筋も幾筋もゆらゆらと


もうどこにも行けないあなたの誰の賛同も得られない呼びかけが

表層から滑り落ちたまま狭い部屋で暮らすあなたの虚しい独り言が

一体私は何なのだという自分自身への無意味な問いかけが

あなたの頭の上から湯気のように立ちのぼっている


生まれない子供たちの聞こえない産声が

祝われなかったハッピーバースデーツーユーが

生かされ続ける老人達の眠れぬ夜明けの呪詛が

年老いた国で暮らす年老いたあなたが漏らす最後のうめき声が

いつの間にかこの国の上に黒く厚い雲となって拡がっている


分厚い雲に手をかけて
雲の隙間の向こうから
戦争がこちらを見ている




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