気分はもう/六九郎
 
飲んだ帰りの電車で漏らしたあなたの吐息が

なにか面白いことないかなとなにげなく呟いたあなたの一言が

ポテトチップスの油にてかる唇から吐いたあなたのゲップが

細くたなびき空に登っていく



不安をあおるコメンテーターのけたたましい叫び声が

くだらないとテレビを見て漏らすあなたの失笑が

ネットに書き込んだ嘲笑の後に漏らすあなたの放屁が

黒く細い煙となって立ち上っている



泣き止まない子供に浴びせるあなたの罵声が

親しげな挨拶の代わりに交わされる怒声とクラクションが

閉じられた窓の中で眠る子供たちの最後の寝言が

熱いアスファルト
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