秋雨前線/道草次郎
「雨」
雨が天からフロントガラスにおち
たらーっと下方へつたい
ワイパーの根方のへんで溜まり水と同化する
人間の一生もこんなものか
と思う
川へいくにも
川は銀河系のずっと先だ
「行」
一行目から分からない
二行目も分からない
三行目にはやけくそで
四行目には化石
五行目には神さまが迎えに来て
六行目にはまた始まる
七行目を無言で通したら
八行目が怒り
九行目が宥めすかし
いま十行目にあきれてしまう自分
「ある」
くらいそらからふる雨は
ただの水
降るときは雨と呼ばれ
落ちてしまえば
土くれにしみて見えなくなる
自然に法則がないのは
雲が一番よく知っている
雨を降らしたいから
ふらすまでと
明け方に烏がカアと教える
知らないのは人間だけ
そうでなければ
あるものも
あれなかったにちがいない
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