幸福に近い場所/
道草次郎
線と銅線を震える手でおさえて
リングスリーブを圧着しなければならないんだ
たぶん他の誰よりも
そうしなければもうどうにもならない運命なのだ
おそらく他のどんな運命よりも
居残りの椅子に座り
そんな事を考えていると終了の鐘の音が鳴った
補習もこれまで
あとはまた明日というわけだ
暮れなずむ街に出ると
やわらかなオレンジ色の灯りがともり始めていた
車のエンジンをふかしたぼくは
やっと
着信を確認することが
できたのだった
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