重力アリス 〜Gravity not equality〜 第一章(小説)/月夜乃海花
運河は夜の色を吸い取り、星を反射し、光を乱反射して眩しく、また暗かった。ここは、まるで絵本に出てくる町のようで現代世界とは程遠かった。
道を色々と歩くと煉瓦の家や様々な三角屋根、彩りのある屋台が見えてくる。道路を歩きながら、通り過ぎる私と犬。犬は勝手に私について来ていた。そして、案の定というべきか、道路を歩く人間はみんな影の形をしており、我々の存在には気付いているのかどうかすら気づかなかった。
何時間経っただろうか。しばらく歩き、私は思い出す。そういえば先ほどの家の外での重力はどうなっているのだろうか。ちょうど目の前に煉瓦の倉庫のような建物があった。試しに道路から倉庫の壁に足をつける。すると、やはり歩けた。歩いてしまった。もうどうしたら良いんだよ。疲れたから一旦休憩するとした。街灯の柱で1人、犬と共に。
これが我々の冒険の始まりであり、少しずついろんな意味で私の中の世界が変わるきっかけへとなるとはこの時知らなかった。
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