北村太郎(その詩と死)/岡部淳太郎
軽さへの変化でありながらも、詩の中に湛えた苦味や暗さの質量は以前と変っていない。いや、時代の拘束から逃れてよりパーソナルな方向にシフトしたぶん、それらの質量は以前よりも増大しているように見える。「荒地」出身でありながら、「荒地」解体後の詩の世界で、後の世代の詩人たちにもっとも大きな影響を与えていたように映る。北村太郎の詩に現われる変化とはいったい何か? まずは「北村太郎詩集」から、有名な「雨」という詩を引く。
{引用=春はすべての重たい窓に街の影をうつす。
街に雨はふりやまず、
われわれの死のやがてくるあたりも煙っている。
丘のうえの共同墓地。
墓はわれわれ一人ずつの眼の底まで十
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)