北村太郎(その詩と死)/岡部淳太郎
 
 詩誌「荒地」に所属していた詩人たちの中でも、北村太郎の存在は一種特異である。鮎川信夫のように出発時に先頭に立つこともなければ、田村隆一のように低空飛行しながら生き延びることもない。最初期にはいかにも「荒地」のカラーと同調した苦い隠喩の詩を書きながら、その後作風を変え、軽やかな詩行の中に苦さと暗さを散りばめる詩を量産してゆく。一九六六年に刊行された第一詩集「北村太郎詩集」とそれ以後の詩集では、誰の目にもわかる明らかな変化がある。田村隆一も第一詩集「四千の日と夜」とそれ以降の詩に大きな変化があるが、その変化が前記のように低空飛行と受け取られかねないものであったのに対して、北村太郎の変化は重さから軽さ
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