なんの纏いもなく/道草次郎
なんの纏いもなくうつくしかったことの経験を内奥へうかがえば経験とは即ち記憶だから
記憶はぼんやりとしているばかりで思い出そうにも思い出されないのです
記憶とはなにですか
どこにあるですか
いまにしかそれはなく
否
今すらも今もう失く
であるならば記憶なるものの所在いずこ
けれども
それはあります
こうしていきていることが
だってそれですから
これを証明というは容易いですがそんな生易しいものではありませんが
軽くも重くもない魂をヒトという種は想起できません
ヒト以外は喋りません
そう結論したかのような面持ちをして
滾々と滾々と泉はわくだけ
浪々と浪々
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