紙っぺらに殴り書き/道草次郎
言ってはいけないことはないけれど
言えないことはある
言えないことなんて無いというのは暴論です
われわれに与えられた自由は
無限の宇宙の中でこのように制限されていて
しかし制限というのも言葉だから
とてもむつかしい考えが要ります
詩人はなにをするのでしょうか
ばらされて然るべき精密時計をばらさぬまま熱く素描するでしょうか
それとも
正邪をわらう烏を飼って鞭を手に祈るでしょうか
よく
わかりません
なにかとはなになのか
がわかりません
論理学ではありません
尤も論理学がどういうものか知っている人はいませんが
あれもこれもみんな
中途で抛擲された構文の寄せ集めで生け花を活けるしかないでしょう
詩人はなんですか
これはばかな質問です
詩人は人間の属性ですか
それとも詩の属性ですか
じぶんにはじつは分からぬことはあまり重要ではありません
分かったという秩序の呪いに比べたら
それはいにしえびとの破顔一笑のようなものに過ぎないのです
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