ほんの紙片/道草次郎
暮らしていて
沈黙が沈黙をうむ
このことの比喩を脳みそに搜すのは堕落だから
せめて歩く
あるいて歩いて上気する身体熱を放散して小さなカイロとなる体
茅の辺りでたちどまり汗ばんだあたまで沈黙をかんがえる
しかしすでに比喩の必要はなくなる
必要と思われたものがそうでなくなるのをあつい身体はただしく呑む
このようにして比喩はうまれない
あつい身体だけを残して
どこかで祝杯があがる
ぼくは詩人ではないからその祝杯に捧げる歌をきかない
真実が好きなのは詩人もそうでない人も同じ
その違いは
ほんとうは定かであるとはいえないのだ
なぜこんな紙片をポケットに紛れ込ませたか
それを知る神すら
すでに
姿がなくなり久しい
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