ほんの紙片/道草次郎
 
そうあるように
あるものが
あるだけなのに

なにかの切り屑のせいで首までが埋まってしまっている
上昇が原理ならよかったのに
鱗のはがれたものだけが天へゆけるのならよかったのに
人の望みはついに望まれることはないのだから
樹の枝ぶりはけして空へ届かぬのだから
人生には絶望をしてはならないし
希望もしてはならないのだから
ラベンダーの香りの線香の匂いが漂ってくる朝には
夾雑物一つとてないことを知ることになる

ひとのつくった船は海面しかしらない
海の体積をかかえた惑星が宇宙にはいくつあるだろう
それぞれが神であり
それぞれが疑いなく神であり
そういう所に我々は暮ら
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