すぐに乾いてしまううた/ホロウ・シカエルボク
唄がわりのアルバムは回転を終えた
わたしは長いため息を吐き終えた
夜は誰のどんな声も聞こえなくなったことに安堵して
ただただ黒雲と雨を垂れ流していた
思いを残せばうたのようでしょう
背中を向ければ映画のようでしょう
わたしは愚かな観客を気にして
本当の思いをどこかへなくすでしょう
点字ブロックの上で誰かが
要領を得ない不満を長々と話している
どうしてこんな時間に
世界はいったんすっかりと寝静まったのに
すべての生と死から
はぐれてしまったのでしょう
だからこそそうして
未練がましく、みじめで
昼間に淹れた珈琲の豆が
雨の音に混じって聞こえて来る
雨が降る夜にじっとしていると
世界には
雨しかないのだという気がして来る
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