『大成功』/道草次郎
ち閑かにその梢をさやがせていた。
「…その後いかがです?ああ裏アイルランドは寒いですか。ところでそちらでも庭師はおやりで?はぁ、クリムトさんがバケツ一杯の肥やしをね。ええ、ええ、話は尽きませんねぇ。ところで、センセ、一つ御協力願いませんか?さっきの話、えぇ、そうです。でも、キルケゴールさんの行方はわからないんですよ、だめですか、はあ、やることがある。左様ですか。分かりました、失礼しました。冥府でもお元気で」
受話器を置いた観測者は別口に託す。梟がギャアと一つ啼く。
「もしもし、あ、お初でごさいます。なんとお呼びすれば…あ、痛み入ります。では、カエル大王さん、どうか今回の件に御協力願えませんか?詳細は竹筒に入れて細道に遺失しておきました。ご覧になった?はあ、……そうですか、はい、そちらで子どもらと遊ぶ方が好き、と。分かりました、ご無理は申しません。河原の鬼たちによろしく、お元気で」
観測者は打ちひしがれるように受話器をおく。ラボの明かりは煌々と燈り続けていた。
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