9年前の嫉妬/道草次郎
結婚をして子供までいて、その子供にも子供がいて、だからつまり孫までいるわけで、人生のある種の醍醐味を知っている、らしいから(子孫を残すか残さないかを個人のスタンスとして割り切れる勇気は僕にはない)。もしくはそれを体現する者として僕の前に存在している。しかも、さっき僕に対して随分親切に仕事を教えてくれた。僕はその教えに充分に応えられなかったけれど、Aさん、あなたはそうだったのか、あなたは孫持ちの良いおばあちゃんだ。だから、僕の嫉妬心は、Aさんのまえでは笑っちゃうほどひねくれていて、不細工なほどみっともない。それが分かっていても、妬みはどうしても胸に湧き出し来て、しばらく止みそうにない。こういった一連
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